令和元年6月25日(火)に札幌館プレゼンテーションルームにて、本学木村賢一教授によるミニ講座『バイオミメティクス~あなたの知らない生物の世界~』を開催しました。
バイオミメティクス(生物模倣技術)とは、生物の特殊な機能や構造をヒントに私達の生活を豊かにする技術を生み出す学問です。この学問をテーマに研究されている木村教授がわかりやすくお話してくれました。
バイオミメティクスの考え方は古くからあり、一番有名なものがマジックテープです。草木の種がどうしてくっつくのか?という疑問から着想を得てスイスの技術者が開発したそうです。
その他、モルフォチョウの構造色(色素の色とは全く違う特殊な色)から自動車の鮮やかなボディカラー、ハスの葉や里いもの撥水効果から中身が付かないヨーグルトのふた、蛾やチョウの複眼レンズの低反射で効率的な集光(モスアイ効果)からテレビの映りこみをなくすフィルム等、さまざまなバイオミメティクスの身近な活用例が紹介されました。バイオミメティクスが身の回りの生活にいかに活用されているかが実感できました。
キイロショウジョウバエの足の構造は、先端に爪とフットパッドがあり、フットパッドをさらに拡大するとヘラ状の毛がたくさんあるそうです。このフットパッドを持つことで、ガラスの上を自由に歩くことができます。通常のキイロショウジョウバエがガラス管の中を自由に歩く様子と、突然変異でフットパッドがなくガラス管の中で滑って転がり歩けないキイロショウジョウバエの様子も動画でとても分かりやすく解説されました。
工学による技術体系では生産プロセスでエネルギーを多く必要としますが、生物の技術体系は省エネルギーで、生物に学ぶことで環境負荷の少ない社会へ繋がり、私たちの生活を豊かにしてくれるのだと学ぶことができました。
〈参考〉バイオミメティクス関連図書
- 日本化学会編『持続可能性社会を拓くバイオミメティクス : 生物学と工学が築く材料科学』化学同人
- アミーナ・カーン著 ; 松浦俊輔訳『生物模倣 : 自然界に学ぶイノベーションの現場から』作品社
- 望月修著『物理の眼で見る生き物の世界 : バイオミメティクス皆伝』コロナ社
- バイオミメティクス研究会編集『次世代バイオミメティクス研究の最前線 : 生物多様性に学ぶ』シーエムシー出版
2019年7月5日作成
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