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「自分は誰?」という問いに応える「記録」

『私の記録、家族の記憶― ケアリーヴァーと社会的養護のこれから』阿久津 美紀(著)

『私の記録、家族の記憶』

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推薦者

二井 仁美  旭川校 教育発達専攻 教育学分野

推薦のことば

 実の親ではなく、児童福祉施設や里親家庭など、社会的養育によって育てられる子どもは、日本では約4万5千人います。この本は、そのような子どもの「記録」とその管理システムについて、アーカイブズ学の視点から論じています。
 アーカイブズ学は、「記録」の管理や保存、利用について研究する学問です。本書は、「私の記録、家族の記憶」というタイトルが示すように、家族との死別や虐待など、さまざまな事情で家族と離れて社会的養育によって育った当事者(ケアリーヴァー)の「記録」について扱っています。「自分は誰?」「なぜ実親と生活ができなかったの?」という問いは、社会的養育に育った多くの人が抱く思いです。そのような思いや問いに応えるためにも「記録」や情報が不可欠です。また、ケアリーヴァーが、自分自身の「記録」にアクセスすることは、アイデンティティを確立し、自身の人生を歩む助けとなります。しかし、日本では、社会的養育に関する「記録」にアクセスすることが難しいという現実があります。
 本書は、イギリスやオーストラリアにおける児童虐待調査と「記録」の歴史、「記録」が児童虐待の抑止力になることに関する論究、韓国の養子縁組における記録管理政策等、海外の事例も紹介しつつ、日本の社会的養護に関する記録管理の課題と、当事者たちが「記録」にアクセスするための支援の方法などを丁寧に論じています。
 表紙の絵は佐藤仁美先生の作品です。

図書情報

『私の記録、家族の記憶― ケアリーヴァーと社会的養護のこれから』
阿久津 美紀(著)
出版社:大空社出版/出版年:2021年/ISBN:9784908926204

※推薦者の所属・身分は2022年3月時点のものです。

記事の種類


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