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女を男にし、絵の中の風景に入り込み、君臣上下を一つの世界に取り込む和歌のパワー

『和歌とは何か』渡部 泰明(著)

和歌とは何か

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推薦者

関谷 由一  釧路校 地域学校教育実践専攻 国語教育実践分野

推薦のことば

 皆さんは、小学校時代以来、短歌や俳句に触れる機会があったと思います。短歌は「五七五七七」、俳句は「五七五」です。俳句の「五七五」は連歌に由来していますから、乱暴に言ってしまえば短歌に行き着きます。ただし、長歌というものもありますから、短歌と長歌を含めた「和歌」というのが正確な言い方になるでしょう。日本文学の歴史は、和歌なしにはほとんど何も語ることができません。
 ではなぜ、日本人、特に都の貴族たちと、その仲間になろうとした武士、町人たちは、和歌に執着してきたのでしょうか。本書の著者は、和歌の本質は「演技」で、その世界は「虚構」であると断じます。和歌は、詠む者の生身の感動を言葉にするものでは【ない】のです。
 一例を揚げると、百人一首に、「玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする」(命の糸よ。途切れるなら途切れよ。もし生き延びでもしたら、弱りはててこの恋を秘密にしていられるかもしれぬ)があります。作者・式子内親王は女性ですが、この歌は、実は「忍ぶ恋」という題で作られた男性の立場の歌であったと見られます(本書p222)。
 本書を読むことで、ジェンダーをも超越する「演技」の舞台を観劇してみませんか。

図書情報

『和歌とは何か』
渡部 泰明(著)
出版社:岩波書店(岩波新書)/出版年:2009年/ISBN:9784004311980

※推薦者の所属・身分は2022年3月時点のものです。

記事の種類


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