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名前とあだ名から見た西洋中世史

『あだ名で読む中世史 ―ヨーロッパ王侯貴族の名づけと家門意識をさかのぼる』岡地 稔(著)

あだ名で読む中世史

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推薦者

津田 拓郎  旭川校 社会科教育専攻

推薦のことば

 高校で世界史を勉強した皆さんは、同じ名前・似た名前の人物が多数存在することに気がついたことと思います。入試対策において、何人もの「シャルル」、「ルートヴィヒ」、「ヘンリ」に加え、「アレキサンドロス」と「アレクサンドル」、「フィリッポス」と「フィリップ」といった、紛らわしい名前を覚えることに苦労した方も多いでしょう。なぜそんな事態が生じているのでしょう。さらに、世界史教科書には、カール「大帝」、イヴァン「雷帝」のようなあだ名が付されている人物も現れます。教科書には出てきませんが、シャルル「禿頭王」、カール「肥満王」、ルイ「吃音王」など悪口のようなあだ名で呼ばれている王様もいます。こうしたあだ名はいつ誰がつけたのでしょう。この本を読めば、こうした疑問はすべて解消することになります。

 しかしこの本から得られるのは、名前とあだ名に関する雑学的知識だけではありません。本書の中で著者は、先行研究をしっかりと消化した上で、史料に基づいて新たな見解を紡ぎ出していくという歴史学者の営みを丁寧に示してくれています。本書に記された、時に執念深ささえ感じさせる緻密な研究手法は、歴史学の神髄とも言えるものです。根拠に基づかないおかしな歴史像が氾濫している現在だからこそ、歴史学者の地道な仕事ぶりを学ぶことには大きな意義があると思います。

図書情報

『あだ名で読む中世史 ―ヨーロッパ王侯貴族の名づけと家門意識をさかのぼる』
岡地 稔(著)
出版社:八坂書房/出版年:2018年/ISBN:97848969942453

※推薦者の所属・身分は2022年3月時点のものです。

記事の種類


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