『歩 ― 識字を求め、部落差別と闘いつづける』山本 栄子(著)
推薦者
菅 正彦 札幌校 理数教育専攻 理科教育分野
推薦のことば
子どもの時に文字を修得できなかった理由はいろいろあるでしょうが、この書籍ではその理由として「部落差別」に焦点を当てています。北海道で生活していると「部落差別」を見聞きすることはほとんどありません。しかし「部落」ではなく別の「差別」によって文字の読み書きができない人と会う可能性はあります。「はじめに」で81歳の著者が書いている「祖父母の教育のないことで定職にもつけずに来たことは、子どもの教育にも関与している。」は、まさに現代にも通じることと思います。小学校を出てすぐに働き出し、しかし文字の読み書きができないために定職につけず、識字教室に通って文字を覚え、資格を取って43歳で定職に着き、60歳で定年退職後、夜間中学、定時制高校、そして大学二部に入学した著者の人生は、教員養成課程の学生・職員・教員として教わるものが多いと思います。
残念ながらこの書籍は2012年の出版ながら、現在では新品はおろか中古でも入手が困難です。しかし本学附属図書館のCiNii Books[他大学所蔵]で検索すると、北海道内をはじめ、国内のいくつかの大学で所蔵されています。他館から借りてでも読む価値があると思います。なお同著者らによる「いま、部落問題を語る―あらたな出会いを求めて、生活書院、2019」も一読をおすすめします。
図書情報
『歩 ― 識字を求め、部落差別と闘いつづける』
山本 栄子(著)
出版社:京都部落問題研究資料センター/出版年:2012年/ISBN:9784759244144
※推薦者の所属・身分は2022年3月時点のものです。
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