『科学的精神の形成 ― 対象認識の精神分析のために』ガストン・バシュラール(著) 及川 馥(訳)
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推薦者
大滝 孝治 釧路校 地域学校教育実践専攻 数学教育実践分野
推薦のことば
みなさんは「疑似科学」や「トンデモ理論」といった言葉にどこかで出会ったことがあるかと思います。それらはきちんとした科学の知識に基づかない荒唐無稽な言説のことを指します。
本書では17-18世紀のトンデモ科学がたくさん紹介されます。例えば、電気現象が解明される前には、静電気が物を引きつける特性から「電気は糊(のり)の一種」とみなされたり、無機物の研究が進む前には、植物とのアナロジーで「鉱山に屑鉄をまけば鉄がなる」と信じられたりしました。こうした主張をみると次のように感じられるでしょう。「昔の人はずいぶんと奇妙なこと考えたのだな。まぁ私はもっと“まとも”だけどね」と。しかし、そうではありません。トンデモ理論は日々の生活や教育によって育まれた「常識」によって生み出される、ということを本書は明らかにします。ここでは細かく説明することができませんが、電気糊理論は実体論、鉄栽培理論はアニミズムという「誰でも持っている」思考の態度・枠組みに支えられています。
「誤りは無知ではなく知識によって引き起こされる」、教師はこの事実をよくよく噛みしめておくべきだと私は思います。
図書情報
『科学的精神の形成 ― 対象認識の精神分析のために』
ガストン・バシュラール(著) 及川 馥(訳)
出版社:平凡社(平凡社ライブラリー)/出版年:2012年/ISBN:9784582767605
※推薦者の所属・身分は2022年3月時点のものです。
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