『健康で文化的な最低限度の生活』柏木 ハルコ(著)
推薦者
木戸口 正宏 釧路校 地域学校教育実践専攻 発達教育実践分野
推薦のことば
「健康で文化的な最低限度の生活」は、国民の生存権と国家による生活保障義務を規定した日本国憲法第25条に記された文言です。その「国家による生活保障」の最前線で働く生活福祉事務所の新人ケースワーカー、「義経えみる」が、この物語の主人公です。
えみるの目を通して、私たちは、現代の社会に存在する貧困・社会的困窮のさまざまな姿―子どもの貧困、アルコール依存、多重債務など―と出会うことになります。それと同時にそうした人々のそばに立ち、彼ら・彼女たちの生活の再建を支えようとする多様な人々の姿をも目にすることでしょう。
えみる自身もまた、右も左も分からないまったくの新人から、さまざまな事情や困難を抱えて生活福祉事務所に来る人々と出会い、一緒に悩み、制度や社会現実の壁にぶつかり、それでも問題を解決するために右往左往、試行錯誤する中で、変化・成長していきます。その意味では、これはえみる(や一緒に働く同期の職員たち)の、職業人としての成長の物語でもあります。
最新刊では、生活困窮者を囲い込み、生活保護やさまざまな補助金の申請をさせながら、それらを「寮費」「食費」などの形で不法に奪い取る「貧困ビジネス」の実態に迫るとともに、コロナ禍での人々の困難な暮らしや、生活保護行政の課題にもスポットを当てています。
「楽しい」ばかりの話ではありませんが、ぜひ読んでみてほしいと思います。
図書情報
『健康で文化的な最低限度の生活』(1~10巻 ※以下続刊)
柏木 ハルコ(著)
出版社:小学館/出版年:2014年~/ISBN:[第1巻]9784091863577
※推薦者の所属・身分は2022年3月時点のものです。
- コメントを投稿するにはログインしてください