『サピエンス全史― 文明の構造と人類の幸福』ユヴァル・ノア・ハラリ(著)柴田 裕之(訳)
推薦者
村田 敦郎 函館校 地域協働専攻 国際協働グループ
推薦のことば
生態系の頂点に君臨するホモ・サピエンス。だが、私たちは史上唯一存在した人類ではない。アウストラロピテクスやネアンデルタール人など様々な「人類」が存在し、消えていった。だが、その中でホモ・サピエンスだけが生き残り、栄華を極めたのである。
それはなぜか?
答えは「虚構(フィクション)」の力にある。
サピエンスは集団で虚構を共有することができた。神話や宗教、法律、人権、平等、会社、国家……、存在しないものリアリティを感じる能力こそが、大勢で柔軟に協力するという空前絶後の能力を人類に与え、現在の繁栄を築いたのである。本書はその人類史である。
ハラリは、人間は虚構を信じ、それに基づいて行動するが、一方で虚構に人生を振り回されてもそれほど幸福にならないことにも気付いていることを指摘する。本書はこの感覚を言語化した、優れた文明批判となっている。
また別の側面からの重要な主張は、人々が虚構を信じることでその想いが現実化するということだ。それは貨幣や法律などだけではなく、歴史的な悲劇なども含まれる。ハラリは、人類が虚構とともに歴史を歩むことについて、あらゆる文化的所産を虚構と知りつつ、盲信せず、ときには古い虚構を否定し、新しい虚構を創造することが幸福の道であると示唆して筆を擱いている。人類の壮大な歴史と未来の展望を知りたい人には必読書となっている。
図書情報
『サピエンス全史― 文明の構造と人類の幸福』
ユヴァル・ノア・ハラリ(著)柴田 裕之(訳)
出版社:河出書房新社/出版年:2016年/
ISBN:[上]9784309226712
ISBN:[下]9784309226729
※推薦者の所属・身分は2022年3月時点のものです。
- Log in to post comments