『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』川上 和人(著)
推薦者
髙久 元 札幌校 理数教育専攻 理科教育分野
推薦のことば
バイクと鳥の骨格標本を愛し、小笠原や南硫黄島、西之島など南海の孤島で鳥を追い、かと思うと文房具屋めぐりを好むインドア派な一面もある、ちょっと変わった鳥類学者による、自然科学エッセイである。
著者は歴とした鳥類学者であり、優れた業績をあげている研究者であるが、随筆家のような読む者を引き込ませる饒舌な文体で、フィールドワークの面白さ、大変さを伝え、鳥類学、分類学、進化学等の知識を注入してくれる。私も動物の分類学者だが、著者に共感できる部分がたくさんある。
特に好きな一節は以下の標本に関するくだりだ。
「標本とは、生物学における辞書である。辞書は、網羅的に語彙が羅列されているからこそ意味がある。(中略)網羅性こそが標本収集の真骨頂と言えよう。中には一度も利用されずに標本箱に安置されたまま永遠の時を過ごす標本もあるが、それがそこにあることが大切なのだ。」
なお、著者の業績ではないが、本書にも掲載されている鳥の学名(生物の世界共通の名前)の面白さは雑学として知っていて損はない。日本に飛来することもあるアカアシカツオドリの学名はスラ・スラ、日本でも繁殖するカササギの学名はピカ・ピカである。
図書情報
『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』
川上 和人(著)
出版社:新潮社/出版年:2017年/ISBN:9784103509110
※推薦者の所属・身分は2022年3月時点のものです。
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