『文学少女対数学少女』陸 秋槎(著) 稲村 文吾(訳)
推薦者
後藤 俊一 札幌校 理数教育専攻 算数・数学教育分野
推薦のことば
本書は全4編からなる連作集で、それぞれ数学にちなんだタイトルが付けられています。“数学”が登場する小説で有名なものとしては小川洋子の「博士の愛した数式」がありますが、とてもいい話にもかかわらず“数学”の描写は現実感が薄くちょっと残念です。
それは仕方のない事だと諦めていましたが、この10数年で小説界に長足の進歩があったのか、前回紹介させてもらった「青の数学」に続き、本書に出てくる高校生の“数学少女”はとてもリアルです。数学オリンピックのメダリストらしく、同級生や先生から数学の天才と思われていますが、言動が実在していてもおかしくない程度に抑えて描かれているからでしょう。連続体仮説やフェルマーの最終定理といった誰でも知っている話だけでなく、解の存在定理や発散級数を取り上げているのも大変好ましい。
図書情報
『文学少女対数学少女』
陸 秋槎(著) 稲村 文吾(訳)
出版社:早川書房(ハヤカワ・ミステリ文庫)/出版年:2020年/ ISBN:9784151843518
※推薦者の所属・身分は2022年3月時点のものです。
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