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子どもは大人の半分じゃない!―子どもの絵の論理(ロゴス)を解き明かす ―

『児童画のロゴス ―身体性と視覚』 鬼丸 吉弘(著)

児童画のロゴス ―身体性と視覚

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推薦者

阿部 宏行(あべ ひろゆき) 岩見沢校 美術文化専攻/教授

推薦のことば

作者の鬼丸吉弘は、大正12年(1923年)上川郡東神楽村(現・旭川市)に生まれ、東北帝国大学(現・東北大学)を卒業後、
北海道学芸大学(現・北海道教育大学)に就任し、1987年の退官まで、主に美学・美術史等で教鞭をとった。
私もその薫陶を受けた一人である。

鬼丸は、美術教育に関する訳書の執筆を経て、『児童画のロゴス』を発行した。
本の帯には「児童画とはカオスではなく一種の論理性を潜(ひそ)めた行為である」と書かれている。
子どものかく絵を単なる「いたずら」とみなすのではなく、「ロゴス」として、論理的に語ることのできるものとして記述している。
また副題にある「身体性と視覚」は、子どもの絵から大人の絵への発達を分ける鍵になっている。

その発達を3期に分け、概ねかかれたものが、大人の目に、何を表しているのか分からない時期の「表出期」、
かかれたものが大人の目にわかるようになるが、大人のかきかたと違っている「構成期」、
そして、ほぼ大人とかきかたが同じような「再現期」としているので絵を指導する立場の人にとって参考になる。
子どもの絵は、身体性に導かれた表出期や構成期を通り抜け、視覚が優位になる再現期に移行する発達の原理を説き、
その原理を理解した上で指導することの大切さを説いている。

我が国の指導について、「児童画に対する誤解や不明の大半は、すべて子供を目の基準で導こうとする」ことから生まれているとしている。
子どもに関わる大人が自らの視覚優位の立場から本来大切にされるべき、子どもの「身体性の原理」を誤った方向に導き強制が続いていると断罪する。

図書情報

『児童画のロゴス ―身体性と視覚』
鬼丸 吉弘(著)
出版社:勁草書房/出版年:1981年/ISBN:9784326198474

※推薦者の所属・身分は2019年3月時点のものです。

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