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「稽古論」でもなく「教育哲学」でもない、「稽古哲学」

『世阿弥の稽古哲学』 西平 直(著)

世阿弥の稽古哲学

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推薦者

中西 紗織(なかにし さおり) 釧路校 学校カリキュラム開発専攻/准教授

推薦のことば

教育、芸術、何かを表現することに少しでも関係のある人が読むと、教える・学ぶ・伝えるといったことに新たな発見があるだろう。
本書は当初「世阿弥の伝書における稽古の言説に哲学的な検討を加える試み、
あるいは、その稽古のダイナミズムを東洋哲学の理論的枠組みによって浮き彫りにし、
〈無作為の作為・作為の無作為〉の交叉反転を読み解く試み」という長い副題を持っていたという。
世阿弥が残した伝書の読み手として想定されているのは息子やその子孫たち、つまりごく限られたその道に生きる者たちである。
しかしその内容は、能楽だけでなく広く芸術表現の世界で現代においてもなお生きて働くものであり、
教育の観点から見ても多くの貴重な示唆に溢れている。

西平氏の言葉の選び方、文章の美しさや議論の進め方にも感嘆するばかりである。
例えば「身体のゼロ地点」、「音楽性」。
音楽学・音楽教育学を専門とする私自身はこれまで、西平氏が書いたような意味で「音楽性」という言葉を使ったことがなかった。
しかし「音楽性」という言葉ほど、世阿弥が書いたことを説明するのに相応しい概念はないだろう。
本書を読んでいる最中私はずっと目からウロコが落ちっぱなしであった。

そして、本書を読む上で(西平氏の著書や論文は多くがそうであるが)、註が非常に重要である。
ここをじっくりゆっくり丹念に読んでいくと本書を読む意味が一層広く深くなる。
世阿弥の伝書のように、繰り返し読むうちにジワジワといろいろなことを感じたり、
益々わからなくなったりする楽しさを特に若い人たちに感じてほしいと思う。

図書情報

『世阿弥の稽古哲学』
西平 直(著)
出版社:東京大学出版会/出版年:2009年/ISBN:9784130101134

※推薦者の所属・身分は2019年3月時点のものです。

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